■『大都市の共同生活』／倉沢進 編 [書評]
すんごい久々の読書感想文。
★大都市の共同生活―マンション・団地の社会学
（東京都立大学都市研究センター企画）
倉沢進編 日本評論社
1990/05・発行
やっとのことで読了。元々これは１５年前に世に出た書物なので、資料として、歴史書として
読み進めていった。やはり多少現代と異なる点、変化している部分はあったが、
根っこの部分では変わらないものもあるので、今でも十分読めるものだと思う。
板橋のサンシティと品川の八潮パークタウンにおける調査を元に、その結果および分析を
中心として、団地という新しい住居形態におけるコミュニティ形成とか人間の行動様式について
書かれている。とりわけ、性差や子どもの年齢差における行動様式、仲間作りの違いという
のが興味深かった。そして、やはり学歴による差というものもあるようだ。
ここに書かれている各年代の人々の行動様式、サークルが、１５年経った今どのように
変化しているのかなぁという探究心は湧いた。誰か続編として調べてくれないものか。
八潮パークタウンには実際何度か足を運んだことがあったので、具体的なイメージを
浮かべやすく、入り込めた。むしろ、それゆえに一つ疑問が湧いた。
あそこは、完全な離島である。バスこそあるが、ちょっと自転車に乗って近所に買い物…
的なことができないし、同じ区内でも中心部、繁華街に行くのは本当に例えるなら島から
フェリーに乗って本土へ行く、という感じのところだ。いや、実際住んでないのでもしかしたら
実際住んでる当事者達は異なるイメージを持っているかもしれないが…
マイカーがある人は別として、高齢者や低所得層、公立に通う小中学生にとっては
あそこが一つの国家であり、あの中で日常生活を送っているのだ。
だから、それ故のコミュニティ形成の違い、仲間作り、サークル活動の変化というのが
あるはずなのだが、それについての記載は殆んどなく、ごく一般的な団地の事例として
処理されていたのが残念に思った。
一つ書かれていたのは、六章（だったかな、玉野先生のパート）に、生協についての記述が
あり、それは大変に面白かった。生活者協同組合、略して生協はご存知の通り
宅配による日用品や食料品の配送サービスを行っているというのが一番知られた活動内容
なのだが、それだけにとどまらない、コミュニティにおいてある役割を果たしているのだ。
八潮パークタウンなんかはそれこそ離れ小島だから、島の内部にダイエーが一店舗ある以外、
日常の買出しが出来る店は皆無だ。（と本には書かれていたが、小生が訪れた時にはローソン
も出来ていた。割と面積も広かったので、ダイエーに匹敵する規模と考えて構わないだろう）
そんな団地ゆえに生協への需要も高いのだろうが、それ以上に、生協の果たす重要な役割が
あり、それについて書かれている部分が大変興味深かった。
まぁそれを説明しだすと本書の記述をそのまま論じることになってしまうので、詳細を知りたい
方は是非本書を手に取っていただきたく思う。（え、それじゃ書評になってないって？）
ともあれ、今までのムラとか血縁・地縁のない新しい共同体についての研究はとても
貴重なものであるように思う。ニュータウン研究もそうだし、こうした団地という
今では高級感・目新しさを喪失した集合体についての研究も、面白いと思う。
それこそ今この時代を斬るならば、六本木ヒルズの居住者・テナントに対して
社会調査をやったらどうだろうか。「ヒルズ族におけるコミュニティ形成の研究」
なんてことをやったら、面白いのではないか。
以上、適当な書評にて失礼。
- 作者:倉沢進
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 1990/05
- メディア: 単行本
社会学というと難しい気がしますが、数年前に八潮パークタウンを舞台に、まさしくその”島”で暮らす若者たちの姿を映し出した、ジャニーズの”嵐”（ミーハーでごめんなさい、娘がファンなもので）の”ピカンチ”という映画があったんです。俺サンの書評を読んでいて ふと その映画が思い出されました。
なんだか場違いなコメントになってるみたいかな？
私の住んでいる所も大型集合団地ではないけれど、マンション群の片隅です。
血縁･地縁よりも共通の生活様式や要求での繋がりが小さな群れとなって存在している感じです。
by (2005-10-18 19:24)
こんばんは。情報提供ありがとうございます！ピカ☆ンチって八潮パークタウンが舞台だったんですね。知りませんでした。ジャニーズ満載の映画な気がして敬遠してしまいましたが、でも内容的には面白そうだったんですよねぇ。この機会にレンタルしてこようかと思います。
（ちなみに場違いじゃ全然ありませんのでご安心ください。むしろ当方としてはこういうコメントをいただけるのが一番ありがたいです。）
実は小生も団地暮らし経験があるので、それゆえ興味を持てたのかもしれません。あの独特なコミュニティを解明するのはそう簡単じゃなさそうですが、様々な人間模様があって面白そうだと思います。
by 俺 (2005-10-19 22:28)