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★ことば072「残留」 [ことばトレンド最前線]

★シリーズ 【ことばトレンド最前線】 vol.072 2007.12.20
「残留」

一連の中国残留孤児訴訟が終結を迎える。遅すぎた国の対応、高齢化する原告側。改正支援法の成立で、ようやく帰国者達が安堵の表情を浮かべている。
国は残留邦人の早期帰国支援を怠って置き去りにし、また帰国後の教育、就職等支援を怠った。なぜか。「本国内だけでも大変なのに、勝手に出てった奴らの面倒まで見れるか」という風潮があったのだろうか。確かに満州へ渡ったのは人々の意志だ。しかし、それは時代背景と当時の国策に拠って判断したことである。
ただ、救うべきは帰国者だけか。それまで面倒を見てくれた中国東北部の養父母へ、わが国は謝意を明確に示すべきである。敵国の民でありながら、見殺しにはできないと貧困や差別にも耐えて我が子のように大切に育てたのだ。
それにしても不思議だ。生まれてすぐ捨てられ、中国で育って、なぜ彼らは祖国・日本への帰国にこだわるのか。国とか人種とかでない、一人の人間として異国の父母に育てられたのに。

(400文字)

※参考文献
『異国の父母―― 中国残留孤児を育てた養父母の群像 ――』
浅野慎一・トウガン共著 岩波書店 2006年

異国の父母―中国残留孤児を育てた養父母の群像

異国の父母―中国残留孤児を育てた養父母の群像

  • 作者: 浅野 慎一, 〓@42AA@ 岩
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本


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コメント 4

俺

※余談1 残留と言っても野球の話ではない。それは明日の原稿で。
※余談2 中国・残留で検索すると、残留農薬の話が上位にヒットする。なんだかねぇ。
by (2007-12-20 01:10) 

okko

最後の部分だけ、チョイ訂正させてください。
「生まれてすぐに捨てられ・・・」たのではなく、旧満州からの引き揚げは、とても子どもを連れてはむりだったようです。後ろ髪をひかれながら、わが子の命を、中国人に託した人も大勢いたとおもいますよ。
でも、ワタシは養い育てた中国人は、本当に偉いと思います。労働力不足だったから、好都合だった、などと言う人もいますけどね。
帰巣本能とでもいうのでしょうかねぇ。
現中国は知りませんけど、白髪三千丈、中国人の懐の深さ、おおらかさは見習う必要ありです。
by okko (2007-12-20 10:57) 

俺

確かに、そうですね。ここの部分はコラムの性質上割愛してしまいましたが、ちゃんと書いた方が良かったかもしれません。

日本人の母達は「せめてこの子だけでも生き延びてほしい」と泣く泣く子を預けて自分は餓死したという事例がたくさんあります。また、仰るように引揚げに子を連れて行けなかったという例もあります。その意味ではそのとおりなのですが、日本政府の対応という風に考えると、やはりいかなる事情があれど「捨てた」という表現をせざるを得ないように思います。実際、軍関係者や男はとっとと帰国し、それからだいぶ遅れて一般大衆が帰国し、帰国できない女性は現地の中国人の妻になるという選択をしたり(残留婦人)、子を預けたり、となったというのが史実のようです。
もっとも、歴史を考える上では当時の価値観やあらゆる背景を読んで総合的に判断しなければならないので、一概に「捨てた」とバッサリ断じて良いかは、やはり疑問符が付くところかもしれません。失礼いたしました。

中国人夫婦が引き取った理由は、自分達に子どもが生まれなかったという例もあったようですが、一番多いのはやはり「目の前に命があるのに、放っておけない。自分が拾わなかったらこの子は死んでしまう」という人道的理由のようです。むしろ自分達の子以上に手厚く育て、学校にも送っているようで、必ずしも老後の面倒を見てほしいという打算だけでやったようには思えません。
by (2007-12-21 01:04) 

okko

中国人父母にも、いろいろな人がいたでしょうから、こういう問題は、一律にこだったと、断言出来ないところが難しいです。
by okko (2007-12-22 15:09) 

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