■『都市の政治学』 多木浩二 [雑記]
書評
『都市の政治学』
多木浩二
美術系の人だが、都市をちょっと違う視点から斬っている点は大変斬新であり、かつ本質を突いているものも少なくない。また、この著者の見習うべき点は、引用の秀逸さだ。
自分の主張だけをタラタラと書くのでなく、といって人の言葉のかき集めではなく、非常に的確な引用が氏の言いたいことを明確にする、輪郭をくっきりさせつつも中心を膨らませていくというと抽象的な表現になってしまうが、非常に秀逸な引用だ。そのジャンルの豊富さも氏の知的教養水準の高さを物語る。
イベントは本質的に、放っておけば街は衰退するという前提でそれを防ぐための暴動のようなものだという主張はなるほどと思った。革命や暴動が現在のイベントの原点であるという見解はとても心に響いた。
都市の治安を完全なものにするといったとき、それを突き詰めていった究極は監獄だ。…というような記述があったが、これはまさに今語られるべき学校論にも当てはまると思う。
次の記事に詳しく書くが、今学校というもの、とりわけ公教育というものと公立の学校は岐路に立たされている。何のために学校に行くのか。今学校は何故叩かれるのか。このあたりの議論はもっと本質的な部分に立ってなされなければならない。それを考える一材料としてこの本は大変有効な教材である。
「都市は完全にはダイアグラム化不可能な複雑な接触の構図として存在する」と多木氏は語る。
(↑これ、引用)
確かに、そこにダイアグラムを取り入れようとしたところで、うまくいくはずがないのだ。
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