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シャッタード・ブルー [映画]

★シャッタード・ブルー
 Bプログラム(箱庭・グリコ・EAT・ボクと彼女とりんご・此の糸)

 @八丁堀リトルシアター



久々に映画を見てきた。それも、八丁堀まで。相変わらず京葉線遠いわぁ…なんて
言いながら、行ってきましたよ。
今回このシャッタード・ブルーを見に行こうと思った理由はただ一つ。
村井美樹さんの演技を見てみたい、と。
こういう理由でもなければこの映画たちを見ることは一生なかっただろうし、
この素晴らしき監督達の名前を知ることは一生なかっただろう。とてもいい時間を過ごせた。
きっかけは何でもいいんですよ。出会えればね。

ちょっと早く到着して地図をたどると、そこはなんと雑居ビルの地下1階。ミニシアターといえ、
ここまで小さい所とは思わなかった。こぢんまりとしてなかなか良さげだ。
チケットを買う。1200円。時間が余ったので、八丁堀を散策。
23区のそれも下町は訪れたことがない土地の方が少ないくらいなので
大体は見知っているのだが、意外に八丁堀は初見参だった。

↑こんな感じ。デジカメ忘れてケータイカメラの画です。画質が悪いのはご愛嬌。

それにしてもこの間の松田での失敗といい、
つくづくJRブランドの信仰は危険だなぁと思い知らされる。
どーよ、この存在感のなさ。

↑誰がこの真下を特急が走ってると思うだろうか。

さて、時間になって、シアターへ入る。お客は一桁か。最初はそんなもんだろう。
それにしても、もう少し入るのかなぁと思ったが、少ない。日曜なのに。
まぁここが原点なのだろう。ここから、十年後、二十年後、日本の映画界に羽ばたいて
行く監督が何人か出るのだろう。その時を楽しみにしていよう。
そして、ここで見たことを自慢できるよう、見守っていよう。…そんなことを思った。

これはニューシネマワークショップという所の研修生が作成した処女作が殆んどで、
いわば卒業制作的なものだろう。
というわけで若い監督の卵達が生み出す新世界へのいざないであり、
色んな意味で「青い」作品が見れるというわけだ。
SHATTERED BLUEというタイトルにも、「砕かれた純情な感情のカケラを集めて
物語りとして映像表現したもの」という意味が含まれているようだ。
青に「純粋」とか「未熟さ」「憂い」、さらには「青信号」から発展させて「とりあえず一歩
踏み出してみよう」というメッセージを込めているとのことで、これもまた共感できる。
短編なので15分から長いものでも40分程度の作品が立て続けに5作上映されたが、
これは1200円以上の価値があった。3作目は生憎趣味ではなかったが、それを除くと
全般的に完成度が高く、特に2作目なんか十分プロに通用する、いや今の日本の映画界を
鑑みるに、トップクラスに入れておかしくない作品だと思えた。

特に印象に残っている2作について書きたいと思う。
【注:若干のネタバレあり!!】



■グリコ
 05/DV/28分
 監督:二宮孝平

これはとても良かった。あ、アンケートにも絶賛の言葉を連ねてしまったから、
関係者の方に小生が誰だかバレてしまうな…まぁいいか。
付き合って長い、若いカップルの日常を切り取った作品だ。
彼女は留学を決意しているも、最近の彼氏の仕事に疲れて仕方なく付き合ってる的な
倦怠感ゆえに、切り出せずにいる。そこから話が始まるわけだが、
喫茶店での会話から、彼女と女友達との会話、そして後半の二人のやりとり…
全て自然で、思いっきり入り込めた。登場人物、3人とも演技がうまい!というより、
殆んど地でやっているという感じだ。演技であることを感じさせない、まるで隣の席の
カップルのやり取りを聞いているような、或いは自分をそこに置き換えて見られるような、
違和感ない作品だ。
そしてさらに良かったのは、カメラワークだ。過剰な演出はなく、喫茶店や家での二人の
会話は、基本定点観測だ。これがいい。「男の目線」とか「女の目線」とか、登場人物に
なりきったカメラがなく、我々は第三者としてその場面を見ることが出来る。でも、だからこそ
自然にストーリーに入り込むことが出来るわけだ。
ストーリーは完璧に仕上がっていて、尚且つ小生のような20代男子にとっては憧憬の念を
感じさせる仕上がりだ。「あぁ、グリコやってみたいなぁ」と思わせたのはさすがだ。
ベタ誉めで恐縮だが、だって本当によかったんだもん。
この監督の名前は決して忘れることなく、覚えていよう。


■ボクと彼女とりんご
 05/DV/15分
 監督:浜地沙絵

これが村井さん出演の作品。こちらもまた『グリコ』同様長く付き合うカップルの日常を
切り取った作品なのだが、こちらは若干のユーモアに加えてメッセージ性を感じる
作品のように小生は感じた。『グリコ』ほどではないがやはり自然体で、男のだらしなさ・
純朴さと、女の複数交錯した感情、どちらも上手く出ている。やはり役者が上手い。
強いて言えば、あのオカマはもっとうまいこと女装できなかったのか。
最初出てきた時から「これひょっとして男かな~」って気づいてしまったのが残念。
そして、この作品で特に感じたのは、幾つか登場する小道具・アイテムが、うまく
ストーリー展開に際していい効果を出しているなぁと思った。タイトルにもなっている
りんごは勿論そうだが、鍋とか、ウォークマンとか、カツラとか…
そして、りんごは映画全体のテーマとして、「答えが一つ」と出し切っちゃわない所が
いいと思った。深みを持たせていると思う。
結局よくわからないのだが、多分そこは「作品を見たあなたが考えてね」ということなのだ。
見終わってから改めて冒頭の「私達、このりんごみたいだね」というセリフを思い出させる。





あとは、今泉力哉監督の「此の糸」も良かった。こちらは笑いが散りばめられていて、そして
後半に進むにつれて「あれとこれがつながって」「あれは実はこういう意味だったのか」という
のがあって、一気に面白くなっていく。さすがだ。役者もそれぞれ個性がある。

そして、これは5作全体を見て感じたことだが、どの作品も共通しているのは、
「ワンルームのアパートが舞台に使われている」ということだ。
おそらくどの部屋もスタッフ誰かが実際に住んでいる部屋なのだろう。
これが実に作品内の登場人物の日常を描写する際に上手く作用していると思った。
同時に見る人間としては制作スタッフの日常とか彼らの苦労・奮闘ぶりを想起してしまう。
そこには舞台裏まで映し出されているのだ。これが共感を呼ぶ。
特に小生は同世代かやや下の代なので、そこに違和感なく入り込めるのかもしれない。

とても充実した1時間半だった。Aプロも引き続いて見てみたかったが、
時間も時間なので、退出。制作スタッフの皆さん、ありがとう。

↑夜の新川二丁目より、佃島を臨む。画質が悪いのはケータイ故。

是非とも他の作品を見てみたくなったのだが、なにぶん「監督の卵」ゆえに、情報が少ない。
誰かお詳しい方いれば是非とも教えていただきたい。


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コメント 3

kiki2jiji2

「ニューシネマワークショップ」なるものを初めて知りました。
非常に興味深いです。
比較的近いので出来れば行きたい!出来れば…
by kiki2jiji2 (2005-10-10 18:29) 

俺

是非!!とオススメしたいところでしたが、リンク元ご参照の通り、昨日、11日で終了してしまいました…
是非またどこかのミニシアターでやってほしいんですがねぇ。それか、ムビハイの#6でも上演されているので(というかそっちがメインのようです)、これがDVD化されるんじゃないかなぁとほのかに期待しております。
by (2005-10-11 00:06) 

俺

ご紹介した2本のうち、「ボクと彼女とりんご」は今週末までの期間限定で
http://www.open-art.tv/news/fes/nagasaki_peace2005/051006.html
↑こちらで見ることが出来ます。
他にもショートムービーが幾つかありますので、ご興味とお時間と優れた回線環境のある方は是非。
by (2005-10-12 04:10) 

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