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笹塚 【シリーズ・東京紀行】 [紀行]

高校時代、豚骨ラーメンにはまった。渋谷界隈、神保町界隈の各店はよく行ったが、笹塚にも甲州街道沿いに幾つかある。実際暖簾をくぐったことがあるのは一店だけだが、雑誌には色々と掲載されているので、一度探し歩いてみたい。
笹塚と言えば、あとはショッピングモールに幼い頃よく家族で出かけたことがある。正式名称は知らないが、「21」と書いてある所だ。新宿の手前ということで、ここは外部から集客をする街というよりは地元の人たちが電車に乗る前、帰ってきた時に立ち寄るという感じの商店街だ。電器店からスーパーから色々あったが、特に印象に残っているのは、2階のお好み焼き屋だ。先日十数年ぶりに入ってみたら、その小ささに驚いた。幼い頃よく行ったが最近行かなかった所というのは、なんと小さく感じることだろう。それは、成長せずに連れ添ってきた記憶との別離だ。もっとずっと大きいものだと思っていたのが、もっと魅力的だと思っていたのが…という哀愁が立ち込める。
この道の向こうにはどんな景色が広がっているのだろうか?と思いつついつもの通りへいつもどおり曲がってゆく、その想いはとても大切なものだ。ある日用もないのにその先を知りたくて逆に曲がってしまったら、案外「こんなものか」とがっかりするものだ。
その店の店主は味一筋なのか、あまり内装とか細かい店の置物とかには気をかけない方のようで、メニューの紙は相変わらず汚いままだった。小生が幼少時に既に汚かったのだから、いっそう汚くなっているわけだ。その店の過ごした歳月、出したお好み焼きの湯気、お客さんの笑顔、ビールの泡……全てが染み付いているのだ。どうせなら木版のお品書きみたいに、歴史を語るのにふさわしい道具を使えば良かったのに、ペラペラの紙だ。でも、それがこの店らしい。
夜の7時だったが、客は他に誰もいなかった。不況という風は相手を選ばず誰にでも無遠慮に吹くものらしい。まぁでもこの小汚さも客足を遠のかせる一因となっていることは否めないが…もう少し気を遣ってほしいものだ。
窓には相変わらず、ドナルドダックの白いぬいぐるみが置かれていた。十数年ぶりの再開だ。しかし…彼はホコリにまみれてとても「白」とは言えない状態で置かれていた。こんなに汚かったか。いや、真っ白だった筈だ。十数年間一度も洗ってないのか…。
時間は何故絶えず動くのだろう。今この素晴らしい瞬間は、何故二度と訪れることなく去っていってしまうのだろう。時間が止まってくれれば…
そんなことを思いつつ、明石焼きを頬張り、そして店を出た。走り続けていくしかない。止まれない。風が語っていた。


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