★ことば211「矛盾」

★シリーズ　【ことばトレンド最前線】　vol.211　2008.5.7
「矛盾」

世の中にはカンペキな矛も盾もある。矛も盾も戦うための手段には変わりなく、立場の違いで手にする道具が変わってくるということなのだ。だから、戦いという一つの現象においては表裏一体の存在であり、どちらの側から見るかによって真逆に見えるだけのことだ。そこで一人二役を演じているのなら、矛と盾とを競わせる必要はないのではないか。
同じものを見ても、見方は変わる。どう位置づけるか。通常は二項対立の両方、「赤と白」とか「右と左」とか「賛成と反対」を同数置いて「中立」という幻想ベールをかける。
しかし、見方はこっちとあっちだけではない。人だけでなく、時間、状況、立場によっても見方は変わる。
何においても、一つに定まったままということ自体がありえないのだ。それをことごとくつじつま合わせをしようとするから、矛盾はいけないという話になる。
見方の問題だ。見方を変えれば、盾で攻めることも矛で守ることもできる。

（３９３文字）