ぶどう農家 [雑記]
ぶどう農家が、誰もが認める最高級のワインをつくった。
都会のソムリエが競って買占め、値段は高騰。
しかし、ぶどう農家は己の仕事に満足せず、
さらに良いものをと挑戦し続けた。
待てども待てども、彼の新作は世に出ない。
「いや、まだ納得いかないんだ」
「せめて、その失敗作でもいいから飲ませてくれよ」
「いや、半端なものを俺のブランドとして出すことはできない」
評判だけが町を席巻した。
彼色に染まった町は、他のワインを拒絶した。
同業他社は、皆廃業した。
彼のかつての作品も、全て飲み尽くされた。
町中からワインが姿を消した。
やがて、人は彼をこう呼ぶようになった。
「あいつはワイン泥棒だ」
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