墓標 [雑記]
この前、家の庭に自転車を停めた時、足元に生い茂る雑草がふと気になった。
大抵、半分寝ながら夜道を自転車で飛ばして帰宅しているので、カギをかけ、門を閉め、階段を上り、カギを開ける…という行動パターンのほかは、いわばアウト・オブ・眼中なのである。しかし、その日はなぜか気になった。
次の日休日だったので、珍しく日の照る自転車置き場に降り立った。足元を見たら、やはりそこにはないはずの緑があった。ドクダミと、名も分からない針のような草と、クローバーもどき。ドクダミの白い花は綺麗に感じたし昔住んでいた所の日陰に咲いていた場面を想起させたが、しかし、全て引っこ抜かなければならないような気がして、蚊取線香に火をつけた。
途中、青い匂いに鼻をやられたり、ダンゴムシが出てきたりして嫌な気分になったが、それよりも協力に我が脳内を占有していたのは、「この草を抜くことで、何億分の一か知らないが温暖化を促進しているのだな」という思いだった。もっとも、それは今まさに石段の上を横切る0.1ミリのクモ(ダニ?)みたいなもので、いるけどいないようなものなのだが。
30分もすると、スーパーのビニール袋はドクダミとその他大勢でいっぱいになった。B市は指定の袋に入れないとゴミを回収してくれないので、川に捨てることにした。
というのは言い訳で、恥ずかしながら、この草の中に紛れてしまっている昆虫類の今後の人生を憂いでしまったからである。カンダタのクモ助けじゃないが、N川の河川敷にばら撒いてやった。
川の先にはこの前植えた赤い花が小さく見える。あれが墓であることは、この遊歩道をジョギングする人たちは知らない。
しかし、翌週河川敷は草刈りされて、捨てたドクダミも墓標のカーネーションも姿を消していた。どこにあったか、もう目印がないので判然としない。
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