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続々・福知山線事故問題 [主張-時事]

<前日の続き。これが一番述べたかったことです。>

【「コンプライアンス」の意味のとらえ方が違う】
まず、ご指摘いただいたことに多大なる感謝と敬意を表したい。おそらく専門で勉強していらっしゃる方ならすぐに私が経済や法に関しては疎く意味の捉え方が浅薄であることにはすぐお気づきになられたことと思う。
今回「福知山線事故から我々が学ばなければならないこと」という文章を世に送るにあたって、この文だけでは完全ではないとは認識していたし、次の議論に発展させたいとは思っていた。そのきっかけをこのご指摘からいただき、今こうして次の文章を書いているわけだから、本当にありがたいことだと思う。
コンプライアンスの意味の捉え方…確かに違和感を持たれる方もいるかもしれない。しかし、ここで論じたいのはそうした意味論ではなく、「それが正しいと信じられ今各企業で推し進められているけど、本当に正しいのか?その推進ゆえの今回の事故じゃないのか?」という、社会に対しての問題提起をしたかったわけである。
私が言いたかったコンプライアンス問題をまさに的確な言葉で論じていらっしゃる方がいたので、ここに転載したい。

「私は企業のコンプライアンスは必要だと思っているし、まだまだ不充分だと思ってます。それは、今の企業はCSR活動の一環としてコンプライアンスを追求しているように見えるからです。
私には、法令を遵守するためにこういうマニュアルを作っていますとか、違反したらこういう罰則がありますとか、コンプライアンスをアピールするための数々の規則を作ることを、法令遵守と言っているような気がするのです。
本当のコンプライアンスは個人個人の心の中にあります。三菱自動車のリコール隠しも、法令遵守の心を持っている誰かが『間違っている』と声をあげ、その声に気づいた法令遵守の心を持っている誰かがまた声をあげていけば、あのような会社ぐるみのリコール隠しにはならなかったでしょう。
逆に言えば、どんなに厳しいマニュアルがあってもそのマニュアルを守るコンプライアンスが無ければ、まったくの無意味です。三菱自動車はそういう会社だったと言えるでしょう。」

<参照元:「とと」さんのブログ

これは私の師匠の言葉だが、世の中には2種類のルールが存在する。それは言うならば「外在律」と「内在律」だ。外在律とは、自分の外にあるルール。法律や仲間内での決め事、ルール、慣習など。それに対して内在律とは、自分の中にあるルール。倫理・規範とか、良心と呼ばれるものが主だ。
これについては先日こちらでも述べたので参照いただきたいが、人間は、自分が何か行動をするかしないかと選択を行う際、心の中で考えてそれがやっていいことか倫理的にまずいのかと判断する。しかし、心が荒廃してくると、自分が金持ちになるためなら平気で盗みに入るし、見つかったら盗みがバレないように人も殺してしまう。そういった自分の行為に何ら後ろめたさも罪悪感も感じなくなる。
これが現代においては上に述べたような「心が荒廃した」人間や犯罪者だけの問題ではなく、ともするとこの国の人間一人ひとりに当てはまる問題として存在しているのだ。公務員の汚職、ブランド偽装、リコール隠し…企業の腐敗が連日新聞に載るようになった。
こうした問題の根幹にあるのは、法やルールといった外的な要因に全てを委ねることにあるのではないか、というのが小生の指摘である。悪いことをする人がいると困るから、或いは企業がしっかりと利益を上げるために、きちんと統一した明文化したルールを設けましょう、そしてそれを厳守しましょう、というのがコンプライアンスだ。しかし、それをあまりにもやり過ぎると、個々の人間の判断能力が鈍る。或いは、抑圧されて発揮されなくなる。
そうすると、個々の人間は「自分がこのハンドルを握って歯車を動かしているんだ」という認識を次第になくしてゆく。また、今まで「多少は大目に見ようよ」と仲間内で交わしていたコミュニケーションができなくなり、ストレスを溜めることになる。
ここで疑問に思われる方がいるかもしれない。鉄道業界、食品業界、自動車業界、どれも安全を第一に働かなければならないのだから、「多少は大目に見ようよ」なんてことがあってはいけない、と。
当然そうだ。安全に妥協は許されない。私が言いたいのはそうではない。安全を守るための看守の警棒が人の心から法へと移り渡ったのだ、ということを言いたいのだ。
今までは、明文化されてなくても当然のこととして安全第一という認識が個々にあった。つまり、誰に言われることなく自分の心の中で安全に対する意識を形成することが今まではできていた。しかし、コンプライアンスが進み、安全に対して人の意識ではなく法の文章が関わることで、どこか自分の事という認識を弱めてしまっている。また、過剰なコンプライアンスは仕事を窮屈なものにし、ストレスを溜める要因となる。また、自分が一人の人間としてでなく、機械同様に扱われていることに対し、多大なストレスを溜め、仕事に対する意欲を次第に喪失する。或いは、「こんなに苦しい思いをしているんだ、少しはゆとりがほしい」と、目に見えないところで悪さをするようになる。「こんなに苦しい思いをしてるんだからこれくらいいいだろう」と、完全に倫理観を喪失し、ルールの抜け穴を突くような不正を何のためらいなく行うようになってしまうのだ。
こうなると、その人間は自分の心の中で考えることができなくなり、ルールに縛られて「○秒遅れた、取り返さねば」と焦ってしまうのだ。こんなゆとりのない状況下で、果たして運転士は常軌を逸することなくハンドルを握れるのだろうか。
だから、結論として我々が大事にしなければならないのは安全に対して絶対的なルールで頑丈に社員を縛りつけて安全を守ろうとするのではなくて、個々の人間に安全に対する意識を持たせ、行動に反映できるような環境を形成していくことではないだろうか。

「でも、悪いことをする人は世の中にごまんといる。どうやって法とかではなく人々の心に自主的に内在律を形成させていくというのか」
この疑問については、小生もまだ答えを出せずにいる。元々心の腐った人間にいくら倫理だの人の道だのを教えたところで、変えるのは難しい。また、企業が社員に対してそれを行っていくとなればなおさら難しい。

答えとしては不十分だが、今考えられるのは以下のことだ。
カリスマ性を持った指導者とやる気・努力が評価される体系。この二つは絶対条件だと思う。
そして、単に学歴とか売り上げとかデータだけでなく、その裏にある出来事や人々の感情を見ることのできる社会。それを目指すために、弛まぬ努力を我々はしなければならないのではないだろうか。


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chew

 『体制』と『大勢』…
 私よりもはるかに若い方の中にも…
 このような思想や『理念』をお持ちの方がいることがわかって…
 …少し安心しました…(未来の行く末に…)
 今後も、定期的に拝見させていただきます。
by chew (2005-05-02 03:02) 

うっぴぃ〜

何時も 「物事に真剣に取り組む姿勢は、崩すことなく、持ち続けなければならないのだ。」 と言うことを、PETAMUN_R も失敗を繰り返すうちに、ひしひしと考えさせられることが増えてます。今回の事故とは、無関係の田舎人ですが、得られた教訓です。
by うっぴぃ〜 (2005-05-02 06:17) 

福崎

初めまして。脱線事故関連のニュース記事からたどりつきましたものです。

我輩のBLOGにも事故に関する記事は取り上げていましたが、それが主体のBLOGではないので、あえてTBせず、コメントさせて下さいね。

一連の事故内容記事を興味深く拝見させて頂きました。

ずばり的確に的を得た内容に、大変驚いています。
我輩の意見とリンクする所が多々あり、賛同されている人達も多く存在していることがわかり、万感の思いになりました。

社会に蔓延する軋轢をいかにして取り除くか。成熟した社会に日本が進むべきではありますが、個々の問題の方が、まだまだ多いような気がしてなりません。

改めて、日本の文化の異常さを認識したような出来事で、外国メディアも興味深く関心を持っていることに、驚きと戸惑いが交錯しているようです。

外国からみた日本はさぞかし、ヒステリック、ミステリアスとの思いになってしまうのでしょう。

かっこ悪く、情けないことですが、グローバルなものの考え方でいたならば、今回の事故も防げていたはずではとの思いが、個人的な意見です。

この事故から学んだものが社会全体に行き渡り、正しい道が出来たなら、日本は国際社会の仲間入りをしたと胸を張ることもできますが、果してどうなることやら、、、
二度とあってはならない事故ですが、今の日本の社会で本当に大丈夫なのだろうか?との思いが強いのです。

中々答えの出ない内容ですが、より良い社会になることを望んでいる一人の人間の意見です。合掌。

HP URL: http://fukuzaki.boo.jp
by 福崎 (2005-05-02 12:36) 

俺さん、TBありがとうございました。
アクセス数を見る限り、そちらも反響が大きいようですね。
この事故は、単なる個人、一企業の問題では片付く問題ではありませんね。
マスコミも偏向報道しがちだけど、ただ、社会のゆがみを矯正しようとしているのは評価しないと。
また、よろしくおねがいします。
by (2005-05-02 15:42) 

俺

おかげさまで、本日付けのアクセス数が累計で5000を突破しました…
最初の福知山線記事については、カウントが3000件を超え、so-netブログのアクセスランキングも遂に2位…こうなったらもう目指すはもう頂上しかないですね。
まだまだ、大いに議論を深めたいと思っています。ご意見是非書き込んでください!
by (2005-05-03 18:33) 

tokkey_0524zet

私のブログにコメントして頂き有難うございました。色々考えさせられる内容で参考になります。
by tokkey_0524zet (2005-05-03 19:11) 

はじめまして。
一連の主張を読ませていただきました。
大変、興味深く、考えさせられる内容でした。

「法やルールといった外的な要因に全てを委ねることにあるのではないか」
とのご意見には、全く同感です。
私は、法律は道具の1つでしかないと思っています。
法律だから守らないといけないというのではなく、何のためにその法律があるのかを考えると、自ずから守るべき基準が見えてくるように思います。
これこそが「個々の人間の判断能力」が問われる部分であり、
法の範囲内でできること=「遊び」に繋がってくるのではないでしょうか。

ルールを作るのも運用するのも人間です。
遊びも判断能力もいらないなんて考えられません。
by (2005-05-04 02:34) 

正己

最初の記事から順番に閲覧している最中です。
将来が楽しみです。(^_^)
さて、この記事、
「犯罪者や○○○○だけの問題ではなく」の「○○○○」の部分がなければ良い主張だと思うのですが…。
「○○○○」と言われて苦しんでいる人のことも配慮していただきたいです。
また、「○○○○」と言われている人達が偏見に苦しんでいることも考慮していただければ幸いです。m(_ _)m
by 正己 (2005-05-04 15:37) 

俺

ご指摘ありがとうございます。該当部分、世の中に送り出す文章としてはふさわしくない語句かもしれませんね。
偏見により苦しんでる方がいるというのは理解できます。ただ、これは言葉そのものを使うことが問題というより、この言葉をこの言葉に該当しない筈の人に対して使っているから問題なんじゃないかなぁと思ったりしています。
先日某テレビ番組でコメンテーター(元大臣)が例の騒音おばさんに対し「見るからにキチガイの顔をしている」と発言し、司会者が慌てて話を遮り、謝罪をしているのを見ました(曖昧な記憶を元に書いているので発言は多少異なっていたかもしれませんが、このようなニュアンスの発言でした)。確かに公の放送における発言としては不適切だったかもしれません。ただ、このコメンテーター以外にも少なからず心の中では「その通りだ」と思った人もいるかもしれませんし、日常生活における人々の会話ではこの種のやりとりはよくあることだと思います。
番組自体が、河原容疑者の行動の特異性にクローズアップして面白おかしくVTRを編集し、「ラジカセから流れてきたのはトランスだった」といったどうでもいい分析までしていて、それでスタジオの受けコメの発言一つ、単語一つだけを「不適切」と判断するのは如何なものか。小生は率直にそう感じました。
この際河原容疑者がキチガイか否かという議論はするつもりはありません。肝腎なのは、そもそも根底の部分で廃絶しなければならないものは何か、ということに尽きると思います。差別用語一つをなくせば済むのではなく、それを使っていわれのない人々を侮蔑するという意識こそを排除せねばならないように思います。同時に、悪事を働いたり国益を害するような行動をとった人間に対しては、責任を問うためにも、反省し更生してもらうためにも、真似する人間を撲滅するためにも、きちんとした批判をせねばならないと思っています。悪党である人間に対してはきちんと「あいつは悪党だ」と糾弾すべきと考えます。
不快に思われる方がいる以上語句は変更したいと思いますが、ただ当文章においては差別意識をもって「キチガイ」という単語を使ったのではなく、その直前の行で述べたような人間を表す代名詞として使用したということは、ご理解いただきたいと思います。
by (2005-05-04 19:18) 

正己

訂正されていることを確認しました。
どうもありがとうございました。m(_ _)m
俺さんの伝えたいことは何となく分かっています。ご安心ください。
言葉狩りをするつもりはないのです。
ただ、この記事内の言葉を使えば、私の「内在律」に従ってコメントさせていただきました。(^_^;)
by 正己 (2005-05-04 21:43) 

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