★ことば171「調整池」

★シリーズ　【ことばトレンド最前線】　vol.171　2008.3.28
「調整池」

人生にも調整池があったらどれだけ快適だろうと思う。忙しい仕事は均等に、忙し過ぎず、暇を持て余すこともなく。
川上からどれだけ水が押し寄せてこようとも、全て受け止められるだけの器がほしい。そして、溜めておいて好きなときにアウトプットできるようになりたい。
現状はと言えば、あっちを塞いだらこっちが水漏れし、乾季があったかと思えばその次の日には怒涛の波が押し寄せて、あれも取りたいこれも取りたいともがけども、水は次から次へと星屑を運びさり、次々と掬った両手の指の隙間から逃げていってしまう。挙げ句、徒労感だけが残ったりして。
でも最近気付いた。この徒労感こそが護岸工事なのだと。僅かではあるが着実に一歩一歩、川幅は拡張しつつある。あとはこの横長に広がった川に網を張ろう。川底を小石が少しずつ削ってゆく。痛みはあるが、その分深化している。
池なんて作れないし調整もできない。だけど、今日も掘っていく。掘るしかない。

（４００文字）