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■『地下鉄に乗って』 浅田次郎 [書評]

書評
『地下鉄(メトロ)に乗って』
浅田次郎

地下鉄(メトロ)に乗って

地下鉄(メトロ)に乗って

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 文庫


いい加減いじめ自殺を語るのも嫌になってきたので、ここのコメント欄への書き殴りを以って終了したいと思います。

気分を変えて。

この話、現在映画が公開中ですが、その宣伝の、音楽に惹かれて
観てみたいなぁと思ったというのがそもそものきっかけです。
なんというか、ALWAYS~三丁目の夕日に似た雰囲気を感じたので。

で、たまたまなつみ先生のブログを読んだところ
「原作を読んでから観に行った方が良い」と書かれていたので、原作を手にしたのです。

実は、浅田次郎を読むのはこれがはじめて。いやぁ、恥さらしもいいところですね。
本当に自分のこれまでの読書記録を振り返ると、文学は100年残る大文豪のものか
筒井康隆か、という感じなので、有名な人も新進気鋭の人も、全然触れていないのです。
鉄道員(ぽっぽや)が流行した時も、結局手を出さなかったのです。

というわけでこの本読んでみたのですが、展開がなかなか面白いですね。
展開ということで秀逸さはあるものの、場面の描き方があと一歩という印象です。
あくまで個人的に、ですが。
これが、浅田次郎という人が、明治以来の文豪の仲間入りをするかといったら
ちょっと疑問な気がするし、じゃあ他にいるかと言っても、思いつかない…
間違っても赤川次郎じゃないと思うし、筒井康隆でもないだろうし。

そして、なんだかここまで過剰に「地下鉄」を出さなくてもいいような気もするが、
なんだろう、この人は営団地下鉄の職員さんなのかしら、と思ってしまう。

そして、最近気になっているのは、この「地下鉄にのって」と「東京タワー」という
作品が殊更に強調する、「レトロ」感。

我々は、1960年代のテレビや東京駅の赤レンガ、銀座の大時計に「レトロ」
という印象を持っているが、東京タワーや東京の地下鉄に対しては、
そういうイメージを持っていない。
よく考えてみればそのくらい前からあるのよね、という印象だ。

それを無理にレトロと思わせようとしていて、特に東京タワーは立て替え話も
現実味を帯びてきた今、殊更にメディアがその色を印象付けようとしている。

でも、どこか違和感を覚える。
無理にレトロ感を出さなくてもいいんじゃないか。

地下鉄だって、あの真っ赤やオレンジの車両がまだ走っていたら
そんな気もするが、今の銀色の車両には何の愛着も持てない。
我々は甲州街道にレトロ感を抱かないが、それは甲州街道が
江戸以来の歴史があるということを知識としては知っていても、実際の
感覚として、視覚や聴覚に訴えかけるものがないのだ。
今の車が走り、今の建物が立ち、今の信号が点滅する。
きっと脇道に道祖神でも立っていたらそんな思いに馳せるのだろうが、
それもない。

どうそしん…打っても変換できない。

大事なものを失い続けて、今の大都会・東京がある。
そうしたテーマにまでに言及していればこの作品ももっともっと深みが出るのだが…。


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なつみ

なるほど。深い解釈ですね。
三丁目の夕日のイメージを期待してみると、期待はずれだと思います。
映画は原作を十分描ききれていないと思います。
でも原作自体も十分描ききれていないところがあるんですよね。
私はすごく面白かったというわけではないんだけど、なんだか今の自分にとって考えさせられることが多かった作品でした。

もしかしたら別に映画を見なくてもいいかもしれないですよ~。なーんて^^;)
by なつみ (2006-11-17 00:02) 

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