■『東京の美学-混沌と秩序-』 芦原義信 [書評]
書評
『東京の美学-混沌と秩序-』
芦原義信
著者は建築家であり街並み・美術・空間あたりの単語で引っかかる学者。
諸外国との対比をしつつ、今後のわが国の都市について、あるべき姿を指摘し、
また東京には自発的な何とも言えぬ新陳代謝の美学があると結んでいる。
新陳代謝の美学というのはなんとも曖昧な表現だが、それを象徴するかのように、
著者の主張には曖昧さが多く感じられる。
戦後の退廃的なまでの「欧米絶対」的な賛美・追従と思しき記述があったかと思えば、
その次には「昔の日本は良かった…」的な主張。
これは小生の読み込み方が浅いのか、それとも著者の分裂指向性か。
ただ、面白い指摘は数多くあった。例えば、パルテノン神殿とわが国の数奇屋建築を
対比させて、日本の独特な空間認識、発想を見出しているのは非常に興味深い。
なるほどパルテノン神殿は遠くから見たときにはじめて整合性があるのであって、
近づいて見ると表面はガサガサなんだとか。
逆に、日本の建築はミクロが集合して一つのマクロ空間を演出しているが、そのミクロ
の部分一つ一つに着目しても、非常に精巧なつくりになっているのだ。
現代においてはその「ミクロ」の部分だけが引き継がれ、悪しき景観が散在している
のだとか。なるほどこの指摘は鋭い。繁華街のネオンや看板広告は
皆でまとめて作ったのではなくて、各々が勝手に自己主張をして、それが
近い場所に集合していて、それをひと括りにしたとき「乱雑さ」が感じられるのだとか。
あくまでその「乱雑さ」については個々の主観が判断するものだと小生は考えているが、
確かに全体を考えない自己主張が乱雑しているという指摘はもっともだと思う。
これは、高層ビルにおいても言える。
大都会の高層ビルは、あちこちに建っている。これは、一つ一つが
自分のことだけを考えてつくったから、結果として全体で見ると非常に汚い景観に
なっているのだ。
さて、これを「都市の課題」とした時に、どのような都市政策が考えられるか。
筆者は、「昔に帰れ」と言う。
建物の高さと隣棟感覚の比率を1:1に近づけ、建蔽率を下げるのが理想だと。
これは森ビルも同じ発想を持っている。
実際に課題は多々あるが、ここでは長くなるので割愛する。
また、渋滞の緩和に関する著者の指摘が大変興味深い。
この本は1993年に著されたもので、著者は「そんなことを言っても
相手にされなかった」と前置きした上で持論を展開している。
しかし、それが案外、10年経った今の社会で活用されているのだ。
つくづく、都市政策は今の常識にとらわれずに、10年先を見据えた視野で
語られなければならないと思った。
勝手な方向を向いて、勝手な高さ、色の統一もない、だから街に出ると草臥れるのかも知れません。それでいて、例のイタリア文化会館、住民の要求でやはり塗り替えの方向に向かっているようですね。京都も今や、無残です。規制をつくるべきだと痛切に思います。
by okko (2006-11-04 10:20)
そうですよね。
イタリア文化会館、ついに塗り直しですか…最近チェックしてませんでしたが、やはりそうなりましたね。
by 俺 (2006-11-07 01:14)
以前ランドスケープデザインの勉強をしていたことがあったので、
そのときこの本買ったんですけど、そのまま本棚の奥の方にあります。
読んでみようかなぁ…
by kiki2jiji2 (2007-02-01 22:39)
ちゅいじゅゆ
by dgds (2013-08-20 11:34)