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■『元・阪神』 矢崎良一 [書評]

書評
元・阪神
矢崎良一著編

元・阪神

元・阪神

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 廣済堂出版
  • 発売日: 2006/06/30
  • メディア: 文庫

結構前に札幌の書店で買って読んだ本だが、遅ればせながら
読後感を記しておきたいと思う。

これは、タイトルの通り「元阪神」の人々の生きた証を伝えるドキュメント本だ。
それぞれの時代の選手をインタビュー形式で取材しており、中には
対談もあるのだが、一番惹かれたのは塩谷和彦と萩原誠の名前が載っていたことだ。

野村監督が就任する前の、一番阪神が好きだった頃に現役だったこの伏兵を
取り上げていること。そこにまず関心を持って、迷わず購入した。

この本自体、出版されたのは2003年に星野阪神がリーグ優勝を達成した直後で、
いわゆる「阪神ブーム」の流行に乗った、一見すると軽い本である。
(余談だが、あの阪神ブームは本当に酷かった…京王線笹塚駅のキオスクにさえ
タイガースの団扇が並んでいたのだから。あの頃からだろう。国民がスポーツに
ミーハー的に熱しやすく冷めやすくなったのは。)

しかし、中身を読んでみると、本当に貴重なドキュメントの数々が収録されている。
「元阪神」と言っても、タイガースで野球人生を全うして円満に引退した選手ではなく、
どちらかと言うとゴタゴタがあって飛び出したり、辞めさせられたり、モメた選手が
多く紹介されている。その代表格として、塩谷と萩原がいた。

塩谷は、球団オーナーの三好が悪態を突いていた時代にトレードで放出され、
新天地で大活躍した選手の一人だ。この時は、ことごとく小生の好きだった選手が
放出されて、その度に新聞をしわくちゃにしたものだった。
例を挙げればキリはない。例えば、現・オリックスの北川。彼は将来の阪神の
先発マスクとなるはずだった。バッティングセンスもあったし、何よりあの笑顔は
高感度が持て、スターになる素質を持っている。しかし近鉄に放出。
そして、近鉄のリーグ優勝を決定付ける、代打逆転満塁サヨナラホームランを
叩き出す(…あれは何年前だったっけか)…その後も中村ノリ不在の近鉄において
ホームランを量産し、楽天とオリックスに分裂した後も、低迷するオリックスを支えた。

あとは…紹介だけにとどめておくが、西武の平尾・高波の俊足コンビ、
近鉄→楽天の山村・星野修、日ハムの坪井、そして、オリックスの塩谷だ。

また、別の章では萩原誠が紹介されている。彼は掛布二世として鳴り物入りで
入団したが、振るわず、故障にも泣き、最後まで華やかな道を歩むことが出来なかった。
彼の実力もあるのかと思っていたが、実際この本を読むと、彼の不運と周囲の環境の
劣悪さに驚く。改めて、不遇な人だったのだと思う。今、彼は何の地位も名誉もないが、
純粋に野球を楽しみながら、子ども達に野球を教える。今が彼にとっては一番幸せな
時間なのかもしれない。

この他、中込伸や仲田浩司、松永浩美なども載っている。

そして、個人的に一番心を打ったのは、藤田平の章だ。

小生は、藤田平という監督が大嫌いだった。
よくもまぁここまでタイガースを酷くしたなとその当時は怒り心頭だった。
中村監督の頃の、1992年だったか、ヤクルトとの熾烈な優勝争いをしていた
あの時代に戻してくれと何度も思ったものだ。
しかし、真実は違った。

もちろんこの本が全て真実だとは思わない。一つの視点かもしれない。
でも、当時いかに自分がマスコミのでっち上げを鵜呑みにしていたのかと、
自分が情けなくなった。

藤田平という男は、阪神球団の腐りきった体制を徹底的に変えようとしていた。
しかし、保守派に阻まれ、保守派と手を組んだマスコミに叩かれ、潰されていく。
本当は、藤田平が立て直したからこそ星野阪神の優勝があったのだ。

ま、詳しくは、この本を買って読んでくださいね。
阪神ファンならずとも、野球ファンなら必読の書です。
尚、新庄の章は飛ばしていいです。これはこの本の客寄せパンダですな。


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