■『死神の精度』 伊坂幸太郎 [書評]
書評
『死神の精度』
伊坂幸太郎
小生にしては珍しいジャンルだ。
それもそのはず、この本は会社の先輩からお借りしたものでして…実は伊坂幸太郎という作家に触れるのはこれが初めてであった。
死神の仕事を場面描写したもので、6つ(だったっけかな)のストーリーが収録されている。
ターゲットとの1週間のやりとりやストーリー展開は非常に面白い。
「ミュージックを愛する」とか、どこか死神に人間臭さに近い愛着を持ててしまう反面、
常に場面は雨だ。薄い水色と灰色が混ざったような描写が続いていく。
やや気になったのは、文章表現が「死神が自分を語る」口調でありながら、視点は
死神という立場と人間という立場を両方知った第三者の目に置かれているので、
そこに違和感がある。また、説明がくどい。そこまで几帳面に書かなくても、と思った。
読者に丁寧に説明しすぎていて、逆に彼の描く世界に入りにくいところがあった。
あと、これはあまり若い作家に期待してはいけないのかもしれないが、作品の奥に
暗示されている作家の意図、メッセージ、哲学性がもう少しほしいように思った。
恥ずかしながら伊坂幸太郎という作家を知らなかったのだが、他のものも
読んでみようと思う。ととさんの「半身浴読書」でも幾つか取り上げられているので、
まずはそのあたりを攻めてみるか…
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