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続・シモキタ再開発を考える 【シリーズ・景観法⑤】 (下北沢再開発問題) [主張-学問]

以前、東京・下北沢の再開発問題について調べたことと思うところを論じたが
きょうはその続報として、また異なる角度からこの問題を考察してみたい。

先日、こんな記事を発見した。六本木という街についての話題である。

思えば、六本木もまた、再開発によって生まれ変わった街の一つである。ひょっとすると、
下北沢の10年後は六本木のような街並みになっているのかもしれない。
いや、目指している方向は六本木とほぼ同じと考えて良いだろう。シモキタもやがて、
超高層ビルが立ち並び、回転ドアにロングエスカレーターがあふれる街に生まれ変わる
のかもしれない。

さて、ここから本題に入るが、あなたは六本木という街が好きだろうか?
或いは、嫌いだろうか?
もし好きだとしたら、そこにどんな魅力を感じるだろうか??

…という書き方からもお察しの通り、小生は六本木という街には残念ながら憧憬の念を
全く抱いていない。むしろ、そこに近代都市特有の病理を見出すことが出来る。

幾つか挙げてみよう。まず、
■移動がスムーズでない点。
これはだいぶ前にこの界隈在住のピーコ氏(おすぎの方だったかな…失念。)も
文句を言っていたが、今まではまっすぐ歩けていた道路が、再開発によって
完全に製作者の意のままに道を曲げられ、場所によっては迂回しなければ進めない
所もできてしまったようだ。その一例だが、ピーコ氏の話によると、今までは普通に
横断歩道があってそこを渡っていたのだが、それがなくなってしまった。
そのため、ぐるりと迂回して、わざわざエスカレーターを上がって橋を渡らないと
向こうに行けなくなった、とのことだ。
これは単に道が変わったことを言っているわけではない。交通安全と車交通の円滑化を
図った結果だろうが、橋を渡る、地下に潜る、などの立体交差化により、人と車との
完全分離が行われたことを象徴している。
これはしかし安全面といっても「車に轢かれない」という安全が保たれたに過ぎない。
むしろ、橋だの地下だのが唯一の歩道となることは、災害時の混乱を招くのではないかと
懸念される。災害時、地下が浸水したり橋が崩落したら、人は避難の道を絶たれるかも
しれないのだ。これは怖い。
さらに言うと、地下や立体を渡るという事は、平地を進む道に比べて歩く歩数、すなわち
歩行者の負担が増えることを意味している。
こうなると、当然その負担を少しでも軽減させるために、道にはエスカレーターや
エレベーターが設置されることになるが、しかしまたここで災害時を考えてみると、
非常に危険だ。事実、先日の南関東を襲った地震の際には、多くの人がエレベーターに
閉じ込められるなどの被害に遭った。これが「閉じ込められて辛かったね」で済んだから
まだいいものの、万が一そこに急病人がいたら?地下が水没したら?
逃げ遅れてしまう危険性がある。

次に
■地盤が弱い点。
…を考えてみる。
これはご記憶にない方も多いと思うが、2ヶ月ほど前、確か地震の影響だったと思うが、
六本木界隈でちょっとした冠水騒ぎが起こった。
これは六本木近くの地中に埋まる上水道管が深夜破裂し、地上に大量の水が溢れ出た
というものだが、幸い人災にはつながらなかったものの、付近の道路が部分閉鎖される、
通行人が足をぬらす…などの被害が出た。
この発生が深夜だったから大事にならなかったのだろう。しかし、容易に復旧されることなく、
翌朝に「大都市のもろさが露呈した格好に」と報道された。

これについては詳細を知らないので原因については明言を避ける。ただ、推測の域で
論じると、こうした被害が起きた原因としては、
「再開発の際、ちゃんと丁寧に工事したの??」
「地下にパイプでも鉄道でもなんでも掘りまくって、地盤は大丈夫なの??」
「土のない地面だから、水がしみこまず、地上で溢れ出たままだったのでは?」
「人が住んでるか住んでないかわからないような高層マンション街だから、
地元住民が復旧作業を手伝う様子もなかったのでは??」
等々、あくまで推測だが、このように考えられる。

実際つい最近にこれ以上の水害が都内山の手地区で起きていることから、この件に対する
注目度は決して高くないが、コンクリ街・高層ビル街だからこそ被害が拡大したのではないか
と小生は推測する。

最後、
■地元コミュニティが見事に崩壊している点。
についても考えたい。
これは新興のニュータウンが栄え始めた頃から指摘されていることだが、
(…と言いつつ小生は専攻でありながらまだまだこの分野は不勉強なので、
大そうなことは申し上げられないが…)
人工的に再開発を行った都市は、何もないところに作り上げたところなら兎も角、
古くよりその地に根付き生活している人と、器が与えられてそこに入ってくる
見ず知らずの新参者との間で大きな壁が存在し、結果的に相互コミュニケーションが
遮断される、ということが往々にしてある。
こうした場合に、例えば震災時にはどうやって助け合うのか、とても疑問に思う。
よくテレビの特集などで見るのが、地元自治会が運営する備蓄倉庫、防災対策設備を
新参者が使えるかどうか、ということだ。
新参者は大抵、地元町内会に加盟していなかったり、加盟していても会費だけのつながりで
顔も合わせたことがない、という状態だったりする。
そうした人たちが、いくら緊急のケースとは言え、震災時に地元自治会の恩恵を
受けられるのか、という問題が生じる。いわば、働かずして都合のいい時だけ
「困ってるから助けてくれ」と頼み込み、同情を誘って図々しく恩恵を受けるキリギリスの
ようなもの、と地元自治会は批判し、その抵抗感がまた新参者をコミュニティに参加
しづらくさせる要因ともなり、悪循環となっている。
それより、高層マンションの高いところに住む人が果たして震災時に無事逃げられるのか、
という疑問もある。エレベーターが止まる、とかそうした物理的な要因ももちろんあるが、
それ以上に、一般的な傾向として、高層マンションに住む金持ちは、地元の地理的な
ことやいざという時の対処法を知らないのではないか、と考えられる。
いざ地上に降りてきたところで、「普段は地下駐車場から車で出勤してます」「家には
寝に帰ってます」なんて人が、自分の住んでる地区の避難場所や、どこにどんな店がある、
などを知っているのだろうか。また、隣近所の助け合いということも希薄になるだろうから、
避難生活は困難を極めるように思う。

また、冒頭に紹介したように、こんな記事もある。高層マンションが意外なところでかけている迷惑…

そしてこれは余談だが、「進みすぎた文明に人々がついて行けていない」現状もある。
まだまだご記憶に新しいと思うが、今年六本木ヒルズでは回転扉による死亡事故が起きた。
親の責任、警備の問題、原因は色々あるだろうしどれが正解とは断定できないが、ただ
一つの事実として、時代の最先端を行くとされる六本木ヒルズの最先端技術として
導入された回転扉は、撤去された。そして、この事故は全国へ影響をもたらし、
多くのビルで回転扉の使用中止ならびに警備員常駐、手動化などの対策をさせることと
なったのである。

…さて、ここまで読んでいただいて、是非とも考えていただきたい問題がある。
それは、防災の基本的な問題。
再開発がなされた新品の街で、果たして災害への対処はきちんとできるか?ということだ。

はっきり言ってナンセンスだと思うが、今の都市計画や建築・土木の専門家は皆
こうした再開発は「建物が密集し道が入り組んで乱雑な街をきちんと整備することで、
防災面でより安全な街に生まれ変わったのだ」と平気で口にしている。

ここまでの文を読んでいただければそれがいかに机上の空論であるかおわかりであろう。
つまり、六本木という街は、道幅が広く救急車はスムーズに通れるかもしれないが、
昔ながらのコミュニティが成立している街に比べると、人々の防災意識ならびに
その対策には格段の差がある。
また、新興都市ならではの副作用というか新たな人災も発生し、実は災害時に
最も危険な街へと変わってしまうのではないか、という大問題を抱えているのだ。

そして下北沢もまた、再開発により生まれ変わろうとしていて、
開発推進派や地元住民の賛成派は、防災面を強調している。
しかし、果たして再開発は本当に安全な都市を作ることになるのだろうか。
六本木の事例を参考に、是非とも一度考えていただきたいと思う。


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ニュー本間

そうそう東京は地下に管やら電車やらいろいろあって
地盤がいいわけないんですよ。
茨城あたりは土地広いし降雨量も少ないしつくば電車出来たし、
首都移転には最適ですよ!そして日本の標準語が茨城弁になるんですよ!?
by ニュー本間 (2005-09-17 12:46) 

okko

俺さん
細かくいろいろ言う方もいるのですね。何回くりかえしても、改善されない事って沢山あります。うるさいほど言われても関心も持たない人もいるわけです。
六本木については、最近あまり行ったことがありませんが、回転ドアの件については、もう少しスピードを落として自分の手の力で回す旧式(格調高い)であれば事故は防げたのになあと思いました・・・あまり関係ないか。
当方、陋屋ですが、向こう三軒両隣、みな顔見知りの仲良しです。
過日、北海道に行った時も、皆さん、快く留守の見張りを引き受けてくださいました。
海風の通り道を塞ぐ高層ビル、何度いっても、何の規制もなく放っておく。せめて我が故郷、下北沢には常識ある再開発を望みます。
by okko (2005-09-18 17:57) 

俺

コメントありがとうございます。
確かに、東京の地盤の弱さに比べると茨城は安全そうですよね。
それにしてもあの常磐新線…もとい、つくばエクスプレス、どうなんでしょうね。残念ながら地理的事情を詳しく存じ上げないのですが、あまりメジャーなところを通っていないのだとか…先日のきょう出来の特集を見たら、地元住民が「こんな赤字路線、将来破綻して税金が投入されるんだから勘弁してくれ」とご立腹のようで…。首都機能移転に関しては賛否両論あるようで小生も両論ともうなずける点があり考えてしまいますが、茨城辺りは良いかもしれませんね。

そして、回転ドアですが、確かに今最も経費を抑えられる対策として多くの建物では「手で押す状態」へと変えられているようですね。回転扉は空調費用を抑えられるとか見た目がよろしいとか、時代の最先端と謳われていましたが、しかしそれに人がついていけずに、結局元に戻ってしまう。皮肉なものです。やはりどれだけ技術が進化し街がハイテクになろうと、結局原点の人間を忘れてしまうと、うまくいかない仕組みになっているようです。
by (2005-09-18 21:34) 

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