敗北力 [主張-ひと]
ソニーの出井前会長が放つ言葉には、とても深みを感じる。
例えば、「うちが欲しいのは1%の天才と99%の従順で真面目な一般社員」という言葉はまさに企業内部の本質を突いた発言だと思う。
先日の退任会見の際にもこんな言葉を述べていた…
「野球で5対6で負けたチームは、負けたことがとりわけ強調されるが、『5点取った』ことにも注目してほしい…」
確か、このような趣旨の発言だったように記憶している。
これをソニーのトップの負け惜しみと捉えているうちは、まだまだ読みが浅い。
どんな人間にも、いい部分はある。どれだけ仕事のできない人間でも、ちょっと別のやり方でやらせてみればすさまじい能力を発揮するかもしれない……
成功の裏には不断の努力が隠れている。
しかし、成功者だけが努力をしたわけではない。
及ばなかったにせよ、敗北者も努力はしてきたはずだ…
結果が全て、の世界もある。けれども、そういう世界だからこそなおさら、敗北は重要だ。
悔しさ、経験、学習……底力が次のステップへと足を動かす。
今日は自分が負けた。今日のところは相手にスポットライトを浴びせてやろうじゃないか。
でも、次は絶対俺が取り返すぞ。
勝ち上がった人間は、ずっと勝ち進むしかない…
どうか、負けたやつの分も頑張って勝ち進んでくれ……
人がいいから、バカを見る。ずる賢いヤツに先を越される。とばっちりを受けてばっかり……
いいじゃないか、それで。
浄化してるんだ。バランスを保ってるんだ。
平和になるなら、いいじゃないか。誰もいないなら、自分がやるしかないじゃないか。
ヒーローは、戦って見せないと、観客に自分が戦闘して勝っているシーンを見せないと、
強いと認めてもらえない。勝者は、比較する弱者の存在により初めて自分が勝者と認定される。
ヒーローは悪の存在なしには自分がヒーローであることを証明できない。
戦闘シーンがなければ、事件が起きなければ、ただのいい人で終わってしまう。
倒されても倒されても、立ち向かう。
風が吹いても、波に呑まれても…
最後にゴールする人間を、みんなで応援する。
順位は最下位とわかっていても、自分がちんたら走っているから
客席が退屈しているのもわかっていても、でも、走りたい。
リタイヤしたら、そこで終わり。だから、倒れてでも這ってでも、ゴールテープを切らなければ。
最後はふらふらになりながら、歓声を受ける。
それは、一番初めにここへ入ってきた者が受ける声援とは異なる声援だ。
それでも、最後まで、やりきる。
成功、到底、無理だとわかっていても……
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