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景観法の功罪と、これから 【シリーズ・景観法③】 [主張-学問]

景観法レポート最終日です。
次回からは具体的に今「景観法」というテーマで語りたいことをシリーズで載せていきます。ご意見・ご感想・あなたの街の事例など、お待ちしております。


3. 景観法の功罪
 景観法について、経済ジャーナリストの阿部和義氏は「日本の景観は欧米に比べて決して良いとは言えず、観光客が来ない一因にもなっている」と指摘した上で、次のように述べている。
 「この法律では、景観を守るために市町村に権限をおろした。県などが入ると間接的になるので、
地域を良く知っている市町村が主体になる。」
「美しい街並みは直接的には観光、さらに経済全般にも良い影響をもたらし、長い目で見れば
景気回復にも役立つだろう。」
 今までは街並みよりも経済的な効率が優先されていたが、それにより殺伐とした街並み、乱雑とした街並みとなった。それを是正し本来望ましい姿に戻すことで、逆に経済効果をもたらすという見通しは大変希望が持てるように思う。しかし、問題点を指摘する人もいる。北海道大学大学院教授の越沢明氏は、期待を持ちつつも下記の問題点を挙げている。

Ⅰ.市街地と里山を包含した都市景観の創造、とくに都市近郊の田園景観について課題が多い。

Ⅱ.従来、自治体の景観条例や景観政策が市街地の個別の建物に注目し、市街地の緑や
たたずまいを含めた街並み全体の品格、景観と緑の一体的な政策推進については弱かった。

Ⅲ.相続発生や企業不振による所有地の転売・放出などによって、民間所有の山林、邸宅、
研修所として維持されてきた景観と緑が急激に変容・喪失している事例が少なくない。

Ⅳ.従来は農林業という産業や環境保全の施策で維持されてきた里山、ため池、防風林、
河岸段丘、湧水なども維持管理が十分でなく、荒廃が見られる。

4. まとめ
 今回景観法という法律があることを初めて知ったが、調べてみると、これまで住民の自助努力に頼ってきた面が大きい景観に関する運動について、しっかりと行政、とりわけ地方自治体に大いなる権力が与えられ明確化したというのが印象である。今後はこうした法律を楯に、行政が積極的に住民と協働し景観を保持できるシステムが構築されれば良いと思う。
 ただ、必ずしも全てのケースにおいて「景観を守るべき」と言えるかという点については疑問を呈さざるをえない。例えば、国立の高層マンション建設をめぐる地元住民と明和地所との対決は、裁判にまで持ち込まれ、地裁での判決は住民側の勝利であり「景観の保護」にとって追い風となったが、二審の東京高裁での判決は逆転し住民敗訴の結果となった。
 何が理想かという答えは、一概には出せない。しかし、その土地その土地での答えは出せるはずだと思う。それは、地元の行政、事業者、そして住民それぞれが相互に意見を出し合う場を積極的に設け、協働で方針を導き出すことにより可能となる。法整備により行政は一層リーダーシップを発揮できる。また、事業者も単純な量的充足だけではなく質的充足も重要であることに気づきはじめている。そして、我々住民は地元への興味・関心を一層高め、地元のあるべき姿を追求する努力を怠ってはならない。



最後に、今回レポートを作成するに当たっての参考文献を掲載しておきます。
景観法に興味をもたれた方、小生のド素人なレポートでは不十分だと思われますので、是非下記siteまたは本を読んでみてください。

【参考記事・文献】
★共同通信ホームページ
http://www.kyodo.co.jp  2005.05.20配信記事
  「景観法が6月1日全面施行 市街地の景観規制を強化」

★『景観法を活かす』__景観まちづくり研究会・編著__学芸出版社_2004.12

★『概説 景観法』__国土交通省 都市地域整備局都市計画課・監修__ぎょうせい_2004.07

★『逐条解説 景観法』__国土交通省 都市地域整備局都市計画課・監修__ぎょうせい_2004.09

★東京都目黒区ホームページ
http://www.city.meguro.tokyo.jp/tikuseibi/jiyugaoka/index.htm
   「自由が丘地区整備課のページ」

★毎日新聞夕刊 2005.05.21記事  「銀座の街並み、大型再開発」

★千代田区ホームページ
http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/plan/bikan/index.htm
   「美観地区ガイドプラン」

★国土交通省ホームページ
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/townscape/index.htm
   「都市景観 Townscape」

★朝日新聞 住まいのお役立ちコラム
http://www.asahi.com/housing/column/040327.html
   「国が初めて景観法を制定、年内に実施」

★環境goo グローバルコラム
http://eco.goo.ne.jp/business/csr/global/clm16.html
   「景観緑三法の制定による期待」

★「越沢明と都市計画」
http://blog.goo.ne.jp/cityplanning2005

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旅人J_(wayfarer_j)

 ヨーロッパ諸国の都市景観の映像を見ると、日本とのあまりの違いに驚きます。
 私は、九州に住んでいますが、神戸にいたこともあり、大阪の各地を見聞したりもしました。また、東京にも一時期住んでいました。
 都市景観のあまりの違いは、石造りの家と木造家屋の文化の違いだけではなさそうな気もします。イギリスでは、古い家屋ほど、固定物件として高価であるようです。
 様々な都市で、看板が規制されていたり、壁の色、屋根の色に規制があったりも。
 私が住んでいる都市では、古いビルは、価値の低い物件とされることが多いように感じます。そうして「廃屋」に近い感じになってゆく。
 地震が多いのが日本であるからという理由もあるのかもしれません。
 長文、乱文御容赦を。m(__)m
by 旅人J_(wayfarer_j) (2008-08-12 19:42) 

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