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ご存知ですか?景観法 【シリーズ・景観法①】 [主張-学問]

近頃話題となっている景観に関して色々と思うところがあるので、少し長いスパンで色々論じてみたいと思う。

まずは、先月大学に出した都市地理学のレポートを3回にわたって転載したいと思う。
1回目のきょうは、「景観法って何?」「聞いたこともない」という方のために、景観法の基本要素を書いてみたい。同じくド素人の小生なりに本を読んで調べてみた結果を、至極簡潔にまとめてみた。


◆先月20日の共同通信ホームページ上に、一つの記事を発見した。「景観法が6月1日全面施行」というタイトルのその記事は、このたび全面施行する景観法により市街地の景観規制を強化し、街の風景を守り街並みを整えることで、観光振興や地域活性化につなげるのがねらいだと伝えていた。この「景観法」とは一体どのようなものか、そしてその与える影響と今後の都市のあり方について、調べてみた。

1. 景観法とは何か
 景観法とは2004年6月11日に国会で可決・成立し、同年6月18日に交付された、わが国初の景観についての総合的な法律である。これまでのわが国の都市政策・建築の実態には、量的充足を追求するあまり質の面でおろそかな部分があったことを反省し、今ある国土を国民の資産として、美しい自然との調和を図りつつ整備し、次世代に伝えることを目的としている。
 例えば、これまでは周囲の環境と無関係に突如高層ビルが建てられても、それを防ぐ社会的な合意が形成されていなかった。こういった現状を打破するべく、「風致地区」「美観地区」などの地区指定や、建築協定・地区計画各制度の活用によるルール作り、緑化協定の制度化などが行われた。
 私の実感としては、これまで素晴らしい景観に対して保護していきたいという思いは本音として持ちつつも、業者の開発など利益追求の現状に対して行政は待ったをかける実権を持つことができず、地元住民の反対運動など自発的な住民運動に頼らざるを得ない状況であったように思う。そこにようやく法律が整備され、活用されるようになったことは画期的なことであると言えよう。
 さて、この景観法の具体的な中身だが、景観を整備・保全するための基本理念を明確にし、さらに住民・事業者・行政の責務を明確化している。具体的には、下記のことが挙げられる。
<住民(公益事業者含む)の責務>
 地元の景観への関心を持ち、積極的に協議会等に参加
 街の外観のプラン建て、保護対象物のピックアップ
 一度出した案を客観的に見直し、再考・行政へ提出
<事業者の責務>
 積極的に協議会等に参加
 土地利用等に関して良好な景観形成へ向けた自助努力
 行政の実施する景観形成に関する施策に協力
<地方公共団体の責務>
 景観計画の策定・変更と景観計画に基づく行為の規制
 NPO法人や街づくり公社など、景観整備機構を指定
住民との協働により協議する場の制定
景観上重要な建築物・工作物等を指定保護
<国の責務>
 法整備、住民へ喚起
 予算や税制による支援

こうした景観法の対象となる一例として、ここでは中心市街地の空洞化と活性化にテーマを絞って論じたい。
 現在全国的に中心市街地の衰退が発生し、問題化している。このため、関係各省庁が連携して支援を図ることを目的とした、「中心市街地活性化法」が1998年7月に施行された。
東京では自由が丘など多くの市街地で建物の過密・老朽化、鉄道による街の分断などの問題を抱え、商業地区の整備に乗り出している。行政が基盤を整備し、TMO(Town Management Organization)と呼ばれるまちづくり会社が街づくりの運営を横断的・総合的に調整する機関として役割を果たし、地元住民・商業事業者と協力して計画を進めていく。TMOが介入する効果としては、商店街や住民が単独で街づくりの計画を進めるのに比べ、公益的な性格が増し、効果的な事業展開が可能となる。
 さらに、東京都心では異なる問題が起きている。東京都心は言うまでもなく企業のオフィスが集積し拡大し、その独特な街の景観を生み出している。情報化の進展などにより一時期は対面接触が重要ではない業種については、地代との兼ね合いから地方にオフィスを移転する企業も少なくなかった。
しかし、ここ数年都心への回帰が起きている。これは2003年問題と呼ばれるものだ。東京都心部でオフィス供給がここ数年急増していることを言うのだが、その原因としては旧国鉄用地の売却、バブル期に計画された再開発計画の進展、建築規制緩和など「供給側の背景」が挙げられるが、また「需要側の背景」としてはコスト削減、職住近接指向、複数ビルにまたがる本社機能の統合などが挙げられる。
こうした都心回帰により都心のビル街は「新しく大きなビル」と「古く小さなビル」の二極分化が起きたが、これによって都心ビル街の景観はどう変化していくのだろうか。次節では、具体的な事例を元に検証したい。

           次回へ


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hoshi-san3

 私も去年ゼミの論文で日本の景観について調べたので、興味深く読ませて
もらいました。新たに知ったこともあり、勉強になりました!
 景観に関する問題って、やっぱり「人の意識」に関わるもんだから、難しいんですよねー。うぅん。
by hoshi-san3 (2005-06-21 00:40) 

俺

コメントいただきありがとうございます。
法学も地理学も専門外なのでレポートにはかなり苦戦しましたが、酷評でないご感想をいただけて、ほっとしています。
個々の価値観にも踏み込んだり周囲を取り巻く利害との対峙もありと、課題は山積みだとは思いますが、こうして法整備されたのはかなりの前進じゃないかなぁと思います。
by (2005-06-21 19:08) 

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